ケニアの学校事情と教育支援団体KESTESを紹介します!!
<ケニア生活368日目>
Chamgei!
こんにちは、てらぼー(@terabow42)です!
ケニアのJICA海外協力隊員の一部は、自身の活動とは別にKESTES(Kenya Students’ Educational Scholarship)という組織でも活動しています。「優秀だけど、お金がなくて教育を受けられない」というケニア国内の学生に向けて奨学金を給付し、金銭面で学習をサポートしている団体です。
私も赴任以来この組織に携わり、微力ながらお手伝いをしてきました。今回はこのKESTESの活動内容と、支援していく中で見てきたケニアの学校事情をお話していきたいと思います。
※本記事で使用している人の写真は全て使用許可を得ています。
KESTESとは
KESTES(Kenya Students’ Educational Scholarship)は、ケニアのJICA海外協力隊員の有志で運営される教育支援団体です。1983年以来、ケニア国内の「優秀であるが、経済的に就学が困難な生徒」を金銭面でサポートしてきました。今も協力隊員の任地を中心に、毎年2名ほどを選抜して奨学金を支給しています。
▽ホームページこちらから▽
私も赴任してから活動に携わっており、現在は副会長と1名の奨学生の担当をしています。KESTESはケニア大統領選の混乱や感染症拡大などで何度も存続の危機を迎えましたが、先輩隊員たちが子供たちのために何とか続けてきました。私も役員の一人として、その責任を果たしていく想いです。
KESTESはケニア・日本の両国で活動しています。ケニアでの活動は先述した学生への奨学金給付の活動の他、寄付金を集めるために日本人祭りで広報活動やグッズ販売を行ったり、学期ごとに学生の自宅や学校を訪問して状況のヒアリングや学用品購入のサポートを行ったりしています。
▽日本人祭りの記事はこちらから▽
一方、日本ではKESTESに加入していた協力隊OBメンバーを中心に、国内での広報活動や物販・寄付を通じた資金調達を行っています。これらで集まった金額も全てケニアの奨学生に使われています。
同時にKESTESではサポーターを募集しており、これまで多くの方にご支援をいただきました。ケニアで活動されているビジネス関係者やパブリックセクターの方々を始め、複数の法人よりサポートをしていただきました。もし我々の理念に興味を持っていただき、ご支援を検討いただける場合はHPより詳細をご確認ください。
ケニアの学校制度とKESTESの意義
KESTESの活動内容を話す前に、少しケニアの学校制度を説明しなくてはなりません。現在のケニアは現状の教育課程と新しい教育課程の2つが混在している状況です。というのも、2017年からCBC(The Competency Based Curriculum)という新教育課程が導入されたためです。
現在の教育課程は8-4-4の制度で、初等教育が義務教育となっています。初等教育の終了時にKCPE(Kenya Certificate of Primary Education)、中等教育終了時にKCSE(Kenya Certificate of Secondary Education)がそれぞれ卒業試験として課されます。
教育課程 | 年数 |
---|---|
初等教育(プライマリースクール) | 8年 |
中等教育(セカンダリースクール) | 4年 |
高等教育(大学) | 4年 |
これらの卒業試験は全国共通テストとなっており、点数によって進学可能なセカンダリースクールや大学が決まります。そのためケニア国内では毎年注目度が高く、成績優秀者はテレビや新聞で取材を受けるほどです。
一方で、この卒業試験で良い成績を取ったからといって進学できるとは限りません。ケニアでは近年、プライマリーとセカンダリーが無償化されましたが、実態は学生に学費や学用品代を請求している学校がほとんどです。さらに、ケニアではこの費用を学校に払えなければ、学生は学校を追い出されるのが通例です。基本的に学期の初日に納入することになっていますが、お金が足りなければその場で家に帰らされるのです。
またこの中等教育は、大きく分けて成績順にナショナル(国立)→カウンティ(郡立)→サブカウンティ(準郡立)の3種類があります。基本的に学費もナショナルが一番高く、サブカウンティが安いので、もし高い点数を取ったナショナルレベルの子でもお金が無いからと言ってサブカウンティの学校に行く子もいます。このように金銭面の問題で、優秀だとしても学校に通えない子がケニアには多くいるのです。
我々KESTESは中等教育にスコープを絞り、KCPEで好成績を取った学生のうち、点数に準じたレベルの学校に通えない子を支援しています。点数基準は300点以上と定めており、2024年度の例で言えば397点と391点の生徒を採用しました。二人とも割り当てはナショナルの学校です。(今回の結果で言えば、全国一位の生徒が428点。400点以上が全体の0.6%、300点以上取得者が全体の25%でした。)
このうちの一人は、配属先の同僚を通じて私が推薦しました。彼女の両親は小作農で、現金収入は月5,000円程度。農家なので毎日食べるものには困らないのですが、金銭的にはかなり貧しい家庭です。一方、彼女が割り当てられた学校にかかる金額は1年で約120,000円(学費60,000円/学用品60,000円)ですから、いかに学校に通わせるのが難しいかが分かります。
私はケニアの民間企業に配属されていますが、人事の現場を見るとケニアではコネクションや学歴・賄賂額が最も重視されます。聞く話によると政治や公共組織でも同様です。そのため、いかに能力が高くても職に困ったり、低賃金の仕事を選ばざるを得ない現実があるのです。こうした背景から中等教育の重要性を鑑みて、家庭環境と成績に応じたサポートをしています。
一方、新教育課程は2-6-3-3-3というシステムに変わり、日本の教育課程に近くなります。方針も大きく変更され、筆記試験だけを重視するのではなく、子供それぞれの特性を活かし専門的かつ実践的な学びを取り入れていくようです。(とはいってもケニアの事なので、方針だけは決まっても内容がスカスカだったり、教材の準備が間に合っていなかったりという問題は多いようです…)
教育課程 | 年数 |
---|---|
幼稚園 | 2年 |
小学校 | 6年 |
中学校 | 3年 |
高校 | 3年 |
大学 | 3年(専攻によってはそれ以上) |
変更にあたり、KCPEやKCSEの制度も大きく変更になるようです。この制度の先頭にあたる学年が2024年現在でプライマリーの6年生なので、来年からKESTESも採用方針を変えていく必要があります。今後、客観的かつ定量的な判断ができる採用基準を検討していく予定です。
奨学生のサポートをしてみて
ケニアの学校は1月が学期始まりなので、プライマリーを卒業した11月から年明けにかけて、新たに採用した奨学生をサポートしてきました。ケニアの中でもかなり田舎の地域に住む女の子が私の担当です。その地域にスーパーマーケットはなく、道も舗装されていません。雨が降ると4WDの車でないと通行できないほどのぬかるんだ道になります。
地域住民のほとんどが小作農で、多くの方は小さい畑で育てた作物で自給自足し、余った分を販売して収入を得ています。休み期間は子供たちも仕事に追われており、訪れた日も畑仕事や野菜販売を手伝っていました。
彼女は5人兄弟の7人家族で、かなり古く小さい土壁の家にみんなで住んでいます。勉強机も電球もないような家なので、KCPEで391点のスコアをたたき出すのは相当な努力をしたのだと推測できます。
彼女はとてもシャイであまり話してはくれないのですが、ご両親の話だと医者になる夢を持っているようで、その夢を叶える環境を与えられないことに罪悪感を持っていました。奨学金を得られなければ学校に行くことを諦め、家の農作業を手伝うことにすると語っていました。
後日、彼女は無事奨学生として採用され、父親とともに学用品の買い出しのため私の任地を訪れました。(彼らの住む町だと学用品が手に入らない)
そこで、服や文房具・日用品などを購入しました。彼女の学校は全寮制なので、中々のお金がかかります。この時も彼女はボロボロの靴と服を着ていたので、学校に行くことで少し生活が良くなることは父親にとっても嬉しそうでした。ケニア人は良くも悪くも先進国の支援慣れをしている人は多く、お金や物を貰っても当たり前と考えてしまう人は多いのですが、お父さんはKESTESのためにお祈りをしてくれたり、ガラケーで何度もお礼のメッセージを送ってくれました。
次の日が入学日だったので、その日のうちに二人は学校に向けて出発しました。私も安心して見送ったのですが、次の日最後の試練が待っていました。ケニアでは、学費の納入などを学期初日に直接徴収することが通例となっており、長い列に並んで一人ずつ処理していきます。そもそもこのシステムが非効率すぎて改善してほしいのですが、彼女たちも同様に朝から並んだそうです。
ただやっと自分の番が回ってくると、その場で事前に通知されていた金額以外の追加の学費や購入すべき学用品を通知されたそうです。KESTESは監査の都合上、すぐにお金を振り込めなかったり、どこまで金銭的サポートをするかの規則があります。そのため、通知がある度に私は会計担当者とやり取りをする必要があり、仕事がある日にも関わらず一日中お父さんへの送金や学校からのレターの取り寄せのサポートをする必要がありました。父親が一旦立て替えておくという方法もあるのですが、その金額すらも所持していないような家庭なので、さらに事を難しくしていました。
結局その日は朝7時から並び始め、夕方6時までに全ての処理が終わらず、入学ができませんでした。次の日の朝にもう一度列に並び、やっと全ての手続きが完了し、無事彼女は入学することができました。2日間ずっと大変なことがあったにもかかわらず、お父さんはまたお礼の電話やメッセージをくれたので、私としてもサポートした甲斐があったなと思います。
民間企業に配属されている私にとって学校や子供と関わる機会がないので、今回の経験はとても貴重でした。残りの任期は少ないですが、家庭訪問等で何度か彼女と会う機会があるので、今後も引き続きしっかりとサポートしていきたいです。
この組織の強みは、このように協力隊経験を活かした広範囲地域の奨学生への直接的なサポートができることだと思っています。また、協力隊のボランティア活動を基盤に組織を運営しているため、人件費等をかけず、寄付の全額を奨学生のために使用できます。支援できる人数は少ないですが、JOCVならではの現地に根付いたサポートで金銭的支援のみならず、国際交流や学業支援も引き続き行っていきます。
この記事で興味を持ってくださった方はぜひ、ホームページや広報誌をご覧いただき、ご支援の検討をお願いいたします。最後まで読んでいただきありがとうございました。
では、Kwa heri!!!
▽次回の記事はこちらから▽
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